UEFA統計データから見る、膝前十字靭帯損傷

膝

今日はサッカーでよく起こる怪我【前十字靭帯損傷】についてです。一体どのような怪我で、どんな理由で起こっているのでしょうか?興味深い報告も見つけたので、そちらもご紹介します。

 

【前十字靭帯とは・・・?】

まず前十字靭帯というのは膝の内部にある靭帯で、ざっくり言うと、すねの骨が太ももの骨よりも前にずれるのを防ぐ役割があります。

スポーツ活動中では、接触によって膝が内側に入ったり、ジャンプからの着地動作や方向転換にといった非接触性の原因によって起こることもあります。

【メディカルスタッフの対応は?】

受傷後はRICE処置が必要です。また、検査として前方引き出しテスト、Lachman testが代表的です。健康な方の膝と比較して、その差をチェックします。受傷後は腫れが大きくなり、判断が難しいこともありますが、損傷が疑われる場合は医療機関でMRIという検査を受けるのが一般的です。

激しい運動を行わない方には保存療法を用いることもありますが、サッカーのような激しいスポーツをする方には外科的な治療が選択されます。再建術といって、自分の太ももの裏の筋肉(半腱様筋など)の一部を切り取り、2重に束ねて膝に移殖します。

手術をした場合、リハビリの期間は半年から9ヶ月、と一般的にはされていますが、今回はそれについての研究報告をご紹介します。

 

【UEFAの研究では・・・?】

UEFA(欧州サッカー連盟)の医学委員会が出したレポートでは、2001/02シーズンから2008/09シーズンまでの調査で、プロサッカー選手の全傷害の0.7%が前十字靭帯損傷だったようです。また、試合では練習よりも受傷率が25倍も高く、手術後8ヶ月以内に95%が練習に参加、12ヶ月以内に95%が試合に出場できたと報告されています。試合に出場できるかどうかは、単純に治り具合よりも監督の意向や復帰時期、移籍などのほかの要素が入ってくるので、単純にスポーツ復帰できるのは術後8ヶ月がスタンダードだということですね。また、この研究では60%、その他の研究では84%が非接触型の受傷パターンだったということですから、より本人のコンディションが受傷に関係しているということが考えられます。つまり、疲労などによって筋肉の運動バランスが崩れ、太ももの筋肉によりすねの骨の前方への引き出しが強くかかりすぎたり、股関節周囲の筋肉の活動不全で膝が必要以上に内側に入りすぎたり、といったことが考えられます。

 

【知っておくべき競技復帰までの実態】

また、プロ選手とアマチュア選手を比較した少し違った視点からの研究もあります。前十字靭帯を損傷したプロ選手の94%が10ヶ月以内にもとの競技レベルに復帰でき、84%が12ヶ月以内に試合に復帰できたとありますが、アマチュア選手で見てみると、なんと前十字靭帯損傷後にプレーヤーとして同期間で復帰できたのは30-50%だというのです。

この違いについて筆者は要因としては、医療機関の質や外科手術の精度、その後のリハビリの質が大きく関わっている、というのです。単純にプロ選手ならば平均して8日以内に診断を受けることができるが、アマチュア選手であれば数ヶ月かかることもある、とされています。また、MRIといった診断を如何に迅速に受けることができるか、理学療法士などのメディカルスタッフによるリハビリを受けることができるのが毎日なのか、週2日なのか、といったことも要因として挙げられています。

アマチュア選手が前十字靭帯を損傷した時の競技復帰の有無については、十分な手厚いサポートを受けなければ、復帰に相当な時間が掛かってしまうのです。また、プロ選手のように周りから全力のサポートを受けられたとしても、競技復帰には半年以上掛かってしまうのです。平均してプロ選手もアマチュア選手も8ヶ月から12ヶ月でだいたい皆競技復帰できる、というわけではないのです。非常にシビアな怪我であることがお分かり頂けると思います。

このように選手生命を非常に脅かす前十字靭帯損傷ですが、非接触型の損傷がメインということですから、選手のコンデション管理によっては限りなく予防できる怪我だということも言えます。そのためのピリオダイゼーション理論だったり、11+だったりがあるわけです。手の打ちようはある、ということですね。

メディカルスタッフはもちろん、コーチングスタッフの方にも、ぜひ知っておいて頂きたい研究結果をご紹介しました。

 

Yasu


PAGE TOP