ACL損傷と疲労の関係② ~ストロートマンの開始6分の受傷から考える~

怪我 松葉づえ

話は3月の上旬までさかのぼりますが、現オランダ代表でイタリアのセリエA、ASローマに所属するケビン・ストロートマンが左膝前十字靭帯損傷により、W杯出場が絶望的になるという出来事がありました。

このブログでも、前十字靭帯についてはたびたび取り上げています。この怪我では、損傷後はスポーツ復帰を目指すのであれば手術が適応となります。再建術後、リハビリには6~9か月かかることになります。

このストロートマンが怪我をした翌日、とある画像がTwitter上で流れてきました。おそらくは彼が受傷したと思われる瞬間の写真です。よーく見ると、まあまあショッキングな写真ではあります。ここにはその画像が掲載されているリンクだけ貼っておきますので、メディカルスタッフの方々や特に平気な方以外は見ないほうがいいかもしれません。。。

Strootman scheurt kruisband en mist WK | FC Kruisband

 

 

リンク先に試合中の動画も貼ってあるのですが、それと照らし合わせてみても、この画像の瞬間に膝に何らかのことが起こったというのは間違いなさそうです。

何らかのこと、という表現をしたのには理由があります。この画像は前半6分のものなのですが、この直後、ストロートマンは確かに痛がっているにも拘わらず、プレーを続行します。そして前半11分、軽くジョグで移動中に突然左膝を押さえて痛がり出し、ここで負傷退場となりました。

この左足一本で着地した瞬間の画像を見る限り、膝関節は少なからず内側に入っているように見えるので、この瞬間に何かしら過剰な負荷が膝関節内に加わったとみるのが自然だと思います。その後、再び痛めるまでのわずかなジョギングも少し違和感を感じさせる走り方だったのも気になります。そもそもなぜプレー続行となったのでしょうか?

 

【原因は疲労?それとも・・・】

彼がプレーを続けた経緯まではわかりませんが、このストロートマンの怪我の原因について、いくつかコメントが上がっています。まずはコンディショニングのスペシャリスト、レイモンド・フェルハイエンから。

彼は4日前のオランダーフランス戦に出場し、右脚を怪我している。これでは左脚に負担がかかるのは当然だ。十字靭帯の損傷はよく疲労が原因で発生する。疲労によって脳からの指令が遅れ、筋の協調性が遅れるためだ。

 

以前、このブログで取り上げたセオ・ウォルコット選手の怪我についても、レイモンドは疲労を原因に挙げています。

 

ACL損傷と疲労の関係 ~ウォルコットの怪我に対するコンディショニングの専門家の見解~ | フットボールノコトバ。

 

 

画像を見る限り、彼の大腿四頭筋はしっかり収縮しているのが見て取れるのにも関わらず、膝が内側に入っています。つまり、膝を安定させる大腿四頭筋の筋力が足りなかったわけではなく、筋の収縮が着地のタイミングに間に合わなかったということでしょうか。

 

一方で、オランダサッカー協会ドクターのエドウィン・フットハルトはこの「疲労が原因」という意見には否定的です。

脳からの指令の遅れによって引き起こされる神経筋関連のケガは、おもに前半か後半の最後に起こるとされている。

前半開始6分で起こったことは、疲労が原因とは言えないのでは、という意見ですね。

 

【何が疲労を蓄積させるのか】

個人的には、疲労が原因である可能性が高いと感じています。その根拠の一つに、以前このブログでも取り上げたFCユトレヒトのウィレム・ヤンセン選手の怪我があります。

疲労の溜まった能力の高い選手は、ベストメンバーになり得るのか? | フットボールノコトバ。

 

 

この時、ウィレム・ヤンセンは前半18分で前十字靭帯の損傷による負傷交代をしました。中2日で臨んだ試合ということで、疲労の蓄積が原因である可能性が高いと思われます。その試合に臨むまでの疲労の蓄積次第では、早い時間帯でも怪我は起こりうるのだと考えられます。

今回のストロートマンの場合、中3日でしたが、怪我を抱えていたということは通常よりも疲労を蓄積させやすい状況だったと考えていいと思います。

おそらく治療台の上や、ピッチ上のチェックでは、彼の右膝や他の動きには問題がほとんど無かったのでしょう。スタメンで出場したのはそういうことだったのだと思います。それでも怪我は起こりました。今回の事例で、私の中では、目に見えない【疲労】というものを捉えることの難しさを改めて突きつけられたような気がします。単純に目の前の選手の、その瞬間の状態を見ただけでは判断できない要素が確実にあり、練習量や試合出場時間、そして怪我の既往はもちろん、私生活での栄養や睡眠、基本的な体調管理など、疲労を蓄積させる原因となる考慮すべき点は山ほどあります。なかなか難しいところですが、これを出来るように日々取り組んでいかないといけませんね。

 

 

Yasu


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