育成年代のテーピングについて その①~テーピングは痛みを誤魔化すためのものではない~

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今日はこんな記事を読んだので、そのことについて書きたいと思います。

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この記事では、育成年代の日本サッカーの現状に疑問を投げかけています。

そこでの一文、

テーピングをしているような選手が試合に出ちゃいけませんよね。そもそも育成年代でそこまでして試合に出るのはダメに決まっている。育成が終着点じゃないんだから、そんなに無理をする必要はないんですよ。

という記述は、まさにその通りだと思います。ここでいうテーピングとは、本来プレーをさせないでリハビリを行うべきレベルの怪我をしているのに、テーピングである程度痛みをごまかして、なんなら選手によっては痛み止めの薬や注射を打ってプレーしている現状について、書いているのだと思います。

私が現在活動しているオランダでは特にそうですが、育成年代の選手のコンディションにはメディカルスタッフのみならずコーチングスタッフもかなり気を使っています。コンディションが整わない選手は使うべきではないということが本当に浸透ているのだと思います。

 

テーピングの目的

まずテーピングの目的ですが、大きく分けて

  1. 外傷予防
  2. 応急処置
  3. 再発予防

の三つが挙げられます。

1.外傷予防

例えば足関節であれば、靭帯に過剰なストレスを与える「内反」の動き(=内返し動作)を起きないようにする、といったものです。これは、外傷の既往が無い場合の部位に当てはまるものです。

2.応急処置

怪我をした直後に、患部の安静固定を保って悪化を防ぐということが目的です。RICE処置というものを以前紹介しましたが、患部のRest(休息)と、Compression(圧迫)に用いられるということですね。

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3.再発予防

これは、怪我をしてもテーピングを巻いてプレーすれば大丈夫、とテーピングしながらのプレーを勧めているわけではありません。例えば捻挫によって不安定性の高まった足関節に対し、足関節をトレーニングする内容のリハビリの過程で再受傷して悪化してしまわないように、という目的です。さらに、リハビリを終えて競技に復帰する際に、まだ身体の負荷許容量が十分ではないがテーピングで負荷のコントロールをしてやればプレー出来る、と判断された場合に用います。そしてそれは、トレーニングごとに選手の状態をチェックし、なるべく外す方向で働きかけていかなければなりません。

 

「痛みを和らげる」は本来の目的ではない?

上記の目的の中に「痛みを和らげる」といった内容が含まれていないことにお気付きでしょうか?テーピングによって痛みが和らぐということは、テーピングによって得られる効果の一つではありますが、それだけを狙って用いるべきではないということです。

例えば急性期の外傷ですが、その痛みはごまかすべきではありません。このブログでも取り上げたことがありますが、痛みは身体からの重要なサインです。

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テーピングによって痛みが減ったということは、確かにテーピングによって関節の位置が正しく固定されたり、動きが制限されたりして患部へのストレスは減ったといえるかもしれませんが、急性期であれば実際に炎症反応は継続しています。その状態で運動することによって腫れの悪化、ひいては怪我の悪化につながります。

これからテーピングを使おうと思っている方は、テーピングは痛みを和らげるもの、という認識だけを持って用いるのは、危険だということを知っていただきたいです。怪我を悪化させないために巻く。怪我を悪化させないということは、患部に余計なストレスを与えないということで、その結果痛みが和らぐのだということを覚えておいてください。

 

テーピングで痛みをごまかすことで、何が起こるのか

テーピングを使用して痛みをごまかしてプレーした場合、どうなるのでしょうか?

まず、それが急性期であれば患部の炎症反応が進行することにより、組織の破壊が進みます。単純に患部が悪化します。

また、痛みが和らいだといっても、筋肉が傷ついていればその機能、そのほかに固有感覚受容器という自分の身体の位置を認識するためのセンサーも阻害されたままですから、良いプレーや相手からの接触に負けないプレーが出来るかと言われれば、難しいでしょう。その場合、上手く身体をコントロール出来ずに相手と衝突してしまったり、さらなる怪我が発生する可能性があります。

さらに痛みを制限するために、関節の動きも制限してしまいますから、その関節の周囲の筋肉も収縮、伸長が制限されて負荷が高まります。例えばテーピングによって足関節の背屈(足首を曲げる動作)が制限されてしまった場合、単純にランニングなどで本来背屈の働きだった部分を膝関節や股関節の動きでカバーすることになります。これらのことから、怪我をしていない筋肉や関節に過剰な負荷がかかり、さらなる怪我を誘発してしまうことになります。

加えて気を付けなければいけないのは、テーピングでごまかしながらプレーをして、仮にその試合を何事もなく終われたとしても万事OKというわけではない、ということです。先に述べたように、テーピングをして特定の関節の動きを制限した場合、その他の健康な部位には普段以上の負荷が掛かってい案す。簡単に言うと、疲労が溜まっている、ということです。その状態を考慮に入れず、その後のトレーニングや試合を同じように行っていては、さらに状況は悪化する可能性があります。目に見える部分以外の所に問題は潜んでおり、一回大丈夫だったから次も同じで大丈夫、ではないということです。テーピングという、ある意味異常な状態でプレーしたわけですから、その選手に対するその後のコンディショニングも形を変えざるを得ないはずです。本来リハビリすべきレベルなのに、テーピングでごまかしながらプレーすることはもちろん避けるに越したことはないのですが、もしチーム事情等からそうなってしまった時、その後の対応にも気を配るべきですね。

 

長くなってきたので、次回に続きます。

 

 

Yasu

参考文献:アスレチックトレーナーテキスト⑥、Sportmedische formularium hoofdstuk17


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