アキレス腱断裂の診断とリハビリ【30~40代男性陣要注意】

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photo credit: Theen … A Finely Turned Ankle via photopin (license)

 

来シーズンに向けて、だんだんとポジティブなミーティングが出来てきました。少しずつ、積み上げていきますYasu@yasuhiradeですこんにちは。

最近身の回りでアキレス腱絡みのケガが多いので、ここらでまとめてみようと思います。

こんな感じで診断・治療をやっていきます。

 

≪アキレス腱とは≫

まずはおさらいです。名前も割とメジャーだし、体育の時間で「アキレス腱伸ばしましょー」なんて準備運動でよく聞くフレーズですね。

アキレス腱とはふくらはぎの筋肉の腱であり、このアキレス腱を通してかかとの骨に繋がっています。人が歩いたり、走ったり、階段を上り下りしたり跳んだりするときに、アキレス腱には非常に大きな負荷がかかります。そのため、アキレス腱は人体で最も強い腱となっています。

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そう、コレです。

 

≪起こるのは主に運動中≫

『運動中に後ろから「アキレス腱あたりになんか当たった」感じがして、痛みがした』

というのがよくある患者さんの証言です。こうなったらまずセラピストはアキレス腱の断裂を疑います。当然ながら痛みはありますが、歩くことはできます。ただ、アキレス腱はふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)を足首につなげていて、その結果つま先を伸ばす動きが出来ます。それを踏まえてアキレス腱が損傷すると、地面を蹴る動きが出なくなるので、踵を中心にぺたぺた歩くカンジになります(←伝わるかな?)。

 

≪診断≫

さて、ここから診断を確定させなければいけません。

代表的なものは視診・触診・ Thompson testです。

断裂後に見られるのがアキレス腱周囲の陥没です。さらに、指で触ってもそのくぼみに触れることができます。そして Thompson test。患者さんにうつぶせになってもらって膝を曲げ、つま先をフリーにします。その状態でふくらはぎを片手でグワッと掴むと、正常であれば底屈(つま先が伸びる動き)が起きます。足関節に動きが無ければテスト陽性、となります。仮に視診・触診でくぼみがあっても底屈ができる場合、部分断裂を疑います。

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(引用: http://home.planet.nl/~hend5055/acuut/page2/page2.html)

そして最後は病院にてエコー検査で損傷の程度を確定します。ちなみに搬送時はなるべく足関節を底屈位にして固定しましょう。シーネがあればいいですが、なければテーピングでも構いません。完全断裂の場合、断裂箇所を近づけておくことが何より重要です。

 

このアキレス腱断裂、いったいどのような人によく起こるのか、それもしっかり押さえておきましょう。

アキレス腱断裂は主にスポーツ活動中、もしくはなにか負荷の高い動きをしたときに発生します。年齢は主に30~40歳が多く、男女比は10:1で男性に圧倒的に多い傷害です。働き盛りの男性陣、要注意です。

それ以外に発生するリスクとしては、

  • 特定の医薬品の常用
  • リューマチや痛風などの疾患
  • 疲労
  • 予想できていなかった動き
  • トレーニング不足

などなどがあげられます。特定の医薬品とは、ステロイドを含むものがその代表格で、日常的に服用していると腱の弱体化が起こり、断裂のリスクが高まります。

ウォーミングアップももちろん大事です。寒い日は特に入念にあっためましょう。

 

≪治療へ≫

病院に搬送したら今度は治療です。切れた腱をつなぎにかかります。そのためにアキレス腱断裂後の治療は大きく分けて保存と手術の二つがあります。

保存の場合、6-8週はギプスで足関節を底屈位(つま先を伸ばした状態)で固定します。これによって切れた組織を近づけて固定し、損傷部位の治癒を促します。

手術の場合、外科的手術によって切れた組織を縫合します。そのあとも、6-8週はギプス固定をします。スポーツ復帰を目指すのならば、手術が推奨されています。

 

≪リハビリ【Return to Sport】≫

手術が終わったら、いよいよリハビリに入ります。

特に早期の荷重の具合は大事なので、順を追って見ていきましょう。

第1~2週

足関節を20~30度底屈(つまり軽~くつま先を伸ばした状態)、ギプスや装具(サポーター)を使って固定します。さらに荷重、つまり体重を乗せるのは20%くらいから徐々に上げていきます。体重計を使ってこれくらい、というのを最初に感覚として覚えておきましょう。あとは、痛み次第で荷重を増やしていきます。フル荷重できるまでは、松葉杖が相棒になります。

この早期荷重がその後のリハビリの経過に何よりも重要です。僕達セラピストはADLという言葉をよく使うのですが、ADLつまりActivities of Daily Living=日常生活動作です。この日常生活動作の再獲得なくしてリハビリの成功はありません。まずはADLを正常に近づける方法を取っていきましょう。

In conclusion, immediate FWB leads to significant higher patient satisfaction, earlier ambulation and returns to pre-injury activity including time to return to work and sports.

ちなみに、早期のフル荷重が患者自身の満足度、歩行や怪我をする前のレベルの仕事やスポーツへの早期復帰をもたらす、とされています。

Accelerated rehabilitation following Achilles tendon repair after acute rupture – Development of an evidence-based treatment protocol. – PubMed – NCBI

第3週

5度~10度ほど、底屈をニュートラルに戻して固定しましょう。足関節を非荷重で動かしていきます。しかし背屈(つま先を上にあげる動き)は0度以上は出しません。つまり、足首は横から見て直角になっているのがこの段階でのMAXです。慎重に行きましょう。この運動によって、関節が固まったり、筋肉が弱まるのを防ぎます。

また、この時期から自転車を使ったトレーニングでコンディションを少しずつ上げていきます。

歩行の荷重は50%以上いければOKでしょう。もちろん、痛み次第でもう少し多くかけることも出来るかもしれません。痛み次第です。この時に、アキレス腱が軽く伸びる感じがするかもしれません。痛みでなければ問題ありません。痛みがあれば、それは少しペースが早いと言えます。3歩進んで2歩戻しましょう。

 

第4~5週

足関節をニュートラルに戻して固定します。5週目の最後には全荷重が出来るとGoodです。さらに、Passiveなストレッチも少しずつ加えていきます。膝の角度を変えて、腓腹筋とヒラメ筋の両方をストレッチしていきます。またIsometricな筋のトレーニングを4方向(底屈・背屈・内反・外反)で行います。ゴムチューブなどを使うとやりやすいですね。

 

第6週~12週

6週から12週まで、一気に進みます。しかしリハビリは必ずStep by Stepです。装具を外し、全荷重も可能となった今、足関節の可動域に対してActiveに働きかけます。自分でアキレス腱を伸ばすストレッチも行っていきます。足関節周囲の筋力もゴムチューブからカーフレイズ(かかと上げ)へ、すなわち徐々にOKCからCKCへとレベルアップさせていきます。OKCとはOpen Kinetic Chainというトレーニング用語で、ざっくり言うと足の裏がフリーな状態で行うトレーニングです。CKCはClosed Kinetic Chainの略で、足の裏が地面やプレートに付いた状態で行うトレーニングです。(←伝わるかな?)

固有感覚受容器のために地面での片脚立ちからバランスディスクへ、歩行もルームランナーを使ってちょっとずつ距離を伸ばしていきます。

 

12週以降

さて、ここまでで3か月が経ちました。この段階で、怪我をする前と同様のレベルで仕事や学生生活を遅れている人も出てくるころです。スポーツをしたいという方はもう少し、頑張っていきましょう。13週目からはジョギングがOKになります。ここからは元の競技レベルを目指してコンディショニングを上げていく時期となります。3~4か月で軽いスポーツに復帰できますが、高強度のスポーツとなれば6ヵ月は必要だと考えておきましょう。それは戻すレベル・目指すレベルが高いほど、コンディションを上げることにも時間がかかるということです。

 

≪可動域制限の理由≫

術後は足首の動き、いわゆる足関節の可動域ですが、底屈・背屈ともにかなり制限されています。というかまだ手術を終えたばかりでは組織がつながり切っていないので、制限せざるを得ません。ただその後、装具などの固定を外した際に可動域制限がまだ残っている場合、もちろんImmobilizationによる関節包・筋の短縮も考えられますが、その一方で組織の癒着という可能性も頭の片隅に置いておいてください。

 

≪再受傷を防ぐために≫

そして再び受傷してしまう可能性も、できる限りゼロ近づけたいものです。

そのためには、と~っても当たり前のことですが、生活習慣を整えないといけません。そもそも男性のアキレス腱は女性のそれよりも血流が悪く、それプラス加齢によって、そのクオリティはどんどん低下していきます。そこに生活習慣の乱れが加われば、やはりリスクは高くなりますよね。腱の回復も当然ながら上手くいきません。ここでいう生活習慣とは、規則正しい睡眠、健康な食生活、適度なストレスが代表的なものです。規則正しい、とか健康な、とか何か言っているようで何も言っていない表現ですが、ここは個々人で自分に合ったスタイルを探すべきでしょう。というより、それよりほかにありません。24時間あなたの身体を管理しているのは、ほかならぬあなたですよ、ということです。

もう一つ注意すべきは、コンディショニング不良・いわゆる疲労やリハビリ中の急なステップアップです。なぜこれを同列に扱うかというと、身体にかかる負荷と身体がその負荷に対して持つ抵抗力・負荷許容量のバランスが大事だからです。そのバランスを見誤ると、リハビリ中の再受傷、もしくはスポーツ中のケガを引き起こします。Jリーグの開幕戦では清水エスパルスの河井選手がアキレス腱断裂を受傷しました。トッププロの選手ですから、健康には人一倍気を遣っていたと考えられます。そしてまだ20代です。それでも身体にかかる負荷がアキレス腱の許容量を超えてしまうと、断裂に至ってしまうこともある、ということです。コンディションと負荷のバランスがいかに大事か、お分かりいただけるかと思います。河井選手にはつらい時期となりますが、またトップコンディションに戻してピッチに帰ってきてくれる日を待ちましょう。決してそれは不可能なことではありません。

 

≪まとめ≫

久しぶりに気合いを入れた長記事になりました。

こんな感じでアキレス腱断裂・手術後のリハビリは行われていきます。もちろん、その時々のトレーニングの内容はちょっとずつ変わっていくものです。トレーニングも、セラピストによって様々なバリエーションがあるでしょう。この記事も、他で使える考え方があればちょっとずつブラッシュアップしていく予定です。僕自身も、まだまだ勉強中なのです。

そのうえで大事なのは、セラピストは特に「なんとなく」という選択をしないことです。「なんとなく」可動域訓練をやった。「なんとなく」筋トレしてみた。「なんとなく」競技復帰してみた。という選択はだれも幸せにはしません。どのリハビリにも言えることですが、きちんと(出来るだけ客観的な)理由をもった選択があれば、そのリハビリは最終的にはいい方向に向かっていくはずです。

 

Yasu

 

 

Reference:

Injury. 2014 Nov;45(11):1782-90. doi: 10.1016/j.injury.2014.06.022. Epub 2014 Jul 7.

Accelerated rehabilitation following Achilles tendon repair after acute rupture – Development of an evidence-based treatment protocol.

Brumann M, Baumbach SF, Mutschler W, Polzer H.


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