身体運動に大きく影響する【線条体】の働きについて

human mechanism

前回の記事で、【線条体】という部位が大脳基底核に存在し、直感的な選択や動作に関わっているという内容を書きました。

脳内で直感・直観を司る部分とは?| フットボールノコトバ。

 

 

ここから次はサッカーに関する内容へ・・・と行きたかったのですが、その前にこの線条体について触れないわけにはいかないと思ったので、この線条体というものは脳のどの部分にあり、どのような働きを主にしているのか、まとめてみました。

 

1.大脳基底核とは

さて、まずは前回の記事から登場している大脳基底核についてです。

大脳基底核=Basal ganglia

①構造

線条体(striatum)、淡蒼球(globus pallidus)、黒質(substantia nigra)、視床下核(subthalamic nucleus)の4つから構成されます。

大脳基底核

(引用元:Medische Fysiologie, hoofdstuk 10. Beweging en bewegingscontrole)

 

この図は、大脳を前後に分断した図です。網掛けになった部分が、大脳基底核に相当します。

ここでは線条体は尾状核(caudate nucleus)と被核(putamen)の二つであらわされています。

ちなみに黒質は本来位置するのは中脳ですが、生理学的には大脳基底核の一部としてとらえられています。

 

②機能

その機能の大きなものとして、「随意運動」すなわち自分の意思で起こす運動に関わっているとされています。これについては後述しますが、大脳基底核変性疾患のひとつである「パーキンソン病」の運動症状から、大脳基底核の異常が不随意運動となって表れるためです。

不随意運動とは、自分の意思とは関係なく発現する運動であり、無意識的・直感的な運動と異なるのは、自分の意思でその発現を抑制できないという点です。

 

2.大脳基底核内における線条体の役割

線条体は、上記でも示したように、尾状核(caudate nucleus)と被核(putamen)の二つによって構成されています。

この線条体の役割はと言えば、運動機能への関与が最も知られています。黒質からの運動に関わる神経伝達物質(ドーパミン)を受け、作動します。いわば、運動に関する情報の入力部とされています。線条体から入った情報は、大脳基底核内の他の領域で処理されたのち、大脳皮質に再び送り返されます。このことから、大脳基底核は大脳皮質と関連して、運動するために必要な情報を処理するループ回路の一部として働いているということです。

この線条体の働きによって、人は「運動を起こす」という、いわゆるスイッチのようなものが脳に入ります。また、物事を行うタイミングも決定されます。

 

3.パーキンソン病との関わり

パーキンソン病(Parkinson’s disease)とは、大脳基底核の線条体と黒質に異常が見られ発現すると考えられて慰安す。その症状は無動・動作緩慢や手足の震え、筋固縮、姿勢・バランス障害、歩行障害などが主だったものです。

このパーキンソン病と線条体との関わりは以下の通りです。

まずは基本の関わり方から。大脳皮質から大脳基底核に情報が運ばれます。この情報は運動に直接関与したものだけではなく、感覚や情動、あるいは認知機能に関する情報など、運動発現に影響を与える様々な情報です。ここで、線条体がそのインプットの入り口として機能するわけですね。この線条体には黒質から分泌された神経伝達物質「ドーパミン」が送られます。さらに視床下部へとその情報は流れ、もう一度運動・感覚野へと送り返され、そこから脳幹や脊髄を通って筋などの出力器官へと刺激が運ばれ、運動などが発現します。この流れを錐体外路系といいます。

詳しい図や説明は、以下のサイトにもかかれています。

東京都神経研: パーキンソン病

 

 

この大脳基底核の黒質や線条体に異常が起こるとどうなるでしょう?

分泌されたドーパミンは神経細胞間を移動して刺激を伝えます。ところが黒質においてこのドーパミンの生産が減少すると、結果として線条体内のドーパミンが枯渇してしまい、大脳基底核から視床下部への上記の情報伝達の流れが停滞してしまいます。

大脳基底核には直接路(線条体→淡蒼球内節や黒質)間接路(線条体→淡蒼球外節+視床下核→淡蒼球内節や黒質)の2つが存在します。このどちらにもドーパミンが関与しているのですが、その働きは直接路が興奮性、間接路が抑制性であるという違いがあります。

 

この直接路は普段は淡蒼球内節や黒質の働きが活発であり、それらの機能によって運動を抑制しています。この状態では運動の信号が送られたとしても、運動は発現しません。しかし、線条体に情報が伝達され線条体が活発化すると、興奮性のシグナルが送られてその抑制が外れて、脳幹や脊髄を通って運動器に信号が送られるようになります。これによって、特定の運動が運動器によって起こります。

一方で間接路はこれまた常に抑制性の働きを持っており、線条体を通して、運動を抑制するシグナルが出されます。ちなみにここで抑制されるのは特定の運動を発現するために「不必要」な運動です。

 

ここで、ドーパミンの生産減少、枯渇という問題が起こるとどうなるのでしょうか?

直接路では線条体へのドーパミンが枯渇し、興奮性のシグナルが発生しなくなります。これによって運動器に信号が送られなくなり、特定の運動を行うのが困難になります。さらに間接路では、不必要な運動を抑制するシグナルが線条体から出されなくなります。この二つの系路の問題から、特定の運動を行うこと、すなわち身体を自由に動かせなくなる、といったパーキンソン病の症状が現れるのです。

 

残念ながら、ドーパミンの黒質における生産が減少する原因はいまだ明らかになっていません。理学療法の世界では、機能訓練によって患者さんのQOL(Quality of Life)を高めるために、運動指導を行います。いくつかの訓練によって、病気の完治には至らなくとも、少しでも日常生活を過ごしやすくできるようにサポートしていきます。

 

線条体に入ってくる情報の内容がポイント?

今回は線条体の働きについてまとめていきました。前回の記事では、直感的認識や選択が行われているとき、線条体が活性化しているという話でした。今日のまとめでは主に、線条体は特定の運動を行うための運動野からの信号のインプットの入り口であること、この部分が運動を発現させるかどうかに大きく関わっているかということについて触れました。特に、線条体に入ってくる情報は運動に直接関与したものだけではなく、感覚や情動、あるいは認知機能に関する情報など、運動発現に影響を与える様々な情報である、ということはプロ棋士に対して行われた実験での直感における脳活動と何かしら関係がありそうですね。

ちょうど今勉強している中枢神経系の疾患ともリンクしていて、人間の運動が運動器によって現わされる仕組みを知ることは、運動を指導する立場の人間にとって不可欠な知識だと感じました。今後も少しずつ、運動を細かくコントロールする、コーディネーションが発揮される際の脳内の仕組みなども、調べてまとめていきたいと思います。

 

 

Yasu

理学療法

Posted by Yasu


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