どのように運動を学んでいくべきか?運動学習の基本

逆立ち

理学療法における治療の一つに運動学習というものがあります。それは、例えば怪我によってできなくなった運動を再獲得する場合や、それまで間違った方法で運動を行っていたために腰痛などの症状が現れた場合、その間違った方法を修正し正しい運動を身につける、といった場面で用いられます。今回はその簡単な構造をご紹介します。

 

運動学習とは

そもそも、運動を学ぶ、というのはどういうことでしょう?もちろん、できなかったことができるようになる、といった結果から考えることができますよね。ではその中身はどうなっているのか、もう少し細かく見ていきましょう。

まずは学習の定義です。学習とは「環境による特殊な経験の結果、潜在的な行動における相対的に永続的な変化を導く過程」とされています。

さらにそこに運動が加わった運動学習では、「トレーニングの結果、知覚的動作技能における相対的に永続的な変化を導く過程」です。

 

運動学習の段階

運動学習における段階は3つに分類されます。その分類とそれぞれの特徴は、

1.認知

  • 意識的な運動のコントロールが強い
  • 実行に時間がかかる
  • 実行中の失敗が多い
  • 視覚や聴覚といった情報によるサポートが必要

 

2.協調・統合

  • 何度もその運動を繰り返すことが多くなる時期
  • 意識的な運動のコントロールはあるが、失敗が少なく、より効率的な動きになってくる

 

3.自動化

  • 意識的なコントロールは少ない
  • 失敗も少なく、かつ速いテンポで行うことができる

 

この3.自動化に達した段階を一般的に「運動技能を習得した」段階ととらえられます。ほぼ無意識に、効率よく行うことができる状態で、そこには運動を行う上で十分なコーディネーションが備えられています。

 

運動学習の過程

このような3つの段階を経て技能を習得していきます。自動化に至ることも重要ですが、どのような運動学習を行うかも重要であるとされています。

運動学習には2つの形があり【潜在的な学習】【顕在的な学習】と呼ばれます。潜在的な学習は、それを行っている本人は行動の結果にしか関心を持っておらず、技能がどのように行われているか、といった部分にはアクセントを置いていません(Knowledge of results)。いわゆる「模倣」がこれにあたります。逆に顕在的な学習では、その過程に関心を持ち、技能に対する知識や望ましい動きの指導を得ながら学習していくというものです(Knowledge of performance)。多くの運動学習ではこの潜在的な学習が行われており、例えば運動のオーガナイズがフォルムが変化した際に、その変化に無意識に運動を調節しながら行いますが、その際にどのような運動の変化が起こったかををきちんと説明できる人はいません。無意識に行っているためです。ですが、より複雑な運動を学習していく際には、この顕在的な学習を行うことが重要だとされています。

 

サッカーのシュート練習を例に挙げてみましょう。

潜在的な学習を用いてシュート練習を行った場合、シュートがゴールに入ったかどうかや、コーチが手本として行ったシュートを見て、それと同じであるかどうか、という点ばかりフォーカスされてしまっているということです。それ以外の自分自身の走り込む角度やトラップの位置、足の振りやミートした部位、さらにはキーパーの位置の把握など、細かい部分をどうすべきか、ということに対して無意識の状態で行っているということです。「自分が今どのようにシュートしたか言える?」と聞いたとき、具体的な答えが返ってこないということが起こります。

顕在的な学習では、自分の身体の動きを意識しながら行います。どのスピードで走り込んで、どの程度の力加減でトラップをして、足の振りや力の込め方、踏み込み脚の位置、キーパーの位置の確認など、自分で意識しながら、さらに外部から正しい運動の知識やフィードバックをもらうことで修正していくということです。

 

失敗を恐れていては上達できない

こうした形で、人間はいろいろな運動を学習していきます。生まれたばかりの赤ん坊も、トップレベルを目指すスポーツ選手も、そこは同じですよね。

大事なことは、運動学習の過程でも書きましたが、運動を身につける際には【失敗】が起こるということです。これは出来が悪いわけではなく、自然な反応であり、この失敗をフィードバックにして運動を修正していくのです。失敗を恐れていては成長できない、という成功者たちの名言などは聞いたことがありますが、このことは運動学習においても言えるということですね。

 

 

Yasu

理学療法

Posted by Yasu


PAGE TOP