リハビリにおける負荷のバランスの取り方

天秤

オランダの理学療法士のリハビリテーションにはこんな考え方があります。

【Belasting-Belastbaarheid】

Belasting=私達が行う活動全てを指します。それは例えばデスクワークだったり、スポーツ活動だったりします。

Belastbaarheid=私達自身の活動に対する身体的許容量を指します。私たちの身体が発揮できるエネルギーには限度があり、それ以上の負荷にさらされると身体に異常をきたしてしまいます。

クリニックに足を運ぶ患者やプレー中に怪我をした選手は、このBelastingとBelastbaarheidにおけるバランスが阻害された状態に陥っています。Belastbaarheidを超えるBelastingを与えられたとき、私たちの身体には何かしらの異常が生じます。それが腰痛だったり、肉離れだったりします。

 

リハビリプログラムを構築する目安

理学療法士はそのリハビリの中で、患者の持つBelastbaarheidを考慮に入れ、運動療法を行う際のBelastingを調節していきます。リハビリテーションも身体活動ですから、Belastingであると言えます。そのバランスを最適なものにすることで、自然治癒をできる限り促進させ、治療にかかる時間を最短にする、というのが、【Belasting-Belastbaarheid】の考え方の目的です。

このBelastbaarheidは定期的に運動をすることによって向上していきます。患者のBelastbaarheidを見極めつつ、リハビリのBelastingを引き上げていき、このBelastbaarheidが患者が望む活動に要求されるBelastingとの間でバランスを持ったとき、もしくは超えたとき、患者の身体の不調はなくなります。

 

具体例で考えてみる

患者が膝の痛みを訴えてクリニックを訪問したとします。この時、患者自身の中には「この痛みを取り除いて欲しい理由」があるので、それを具体的にする必要があります。その理由から、要求されるBelastingを明確にするわけです。ここではその理由を「痛みなく趣味のウィンドウショッピングができるようになりたい」としましょう。すると要求されるBelastingは店から店へと動き回る際の「歩行」となるわけです。理学療法士の仕事は必ず、患者の「こうなりたい」という訴えを出発点にして始まります。

これはスポーツ選手も同じですね。「競技に復帰したい」という訴えがあれば、その競技において要求されるBelastingを見極める必要があります。

次に、身体の状態を問診や検査によって確認していきます。すると痛みがある膝にはInstability不安定性があることがわかってきました。つまり「歩行」というBelastingに対し、膝の不安定性が原因でBelastbaarheidが低い、よって膝に痛みが出るということになります。

ということでこの患者への運動療法の方針は「歩行が痛みなくできるために必要な膝の安定性を手に入れること」となります。

※実際は評価も目標設定ももっと細かく行っていきますが、長くなってしまいますので今回はざっくりとした表現になっています。

 

チームの勝利も大事ですがそれ以上に・・・

以上が【Belasting-Belastbaarheid】の考え方です。運動療法を行う際には、この考え方を必ず頭の片隅においておき、運動プログラムが患者にとって難しくなりすぎないように注意します。

サッカー選手へのリハビリでもこの考え方はもちろん重要です。BelastingがBelastbaarheidを超えてしまったとき、運動中に痛みが生じたり、代償運動が起こったり、翌日に患部に異常が見られたりします。このサインを見逃さず、運動プログラムを微調整していくことが競技復帰への近道になります

もちろん、痛みがある状態でもある程度のパフォーマンスが期待できるのであれば選手を試合でプレーさせたい、という気持ちはわからないでもありません。ですがたとえ結果としてチームが勝ったとしても、その選択がもたらすのは選手の身体の中で【Belasting】と【Belastbaarheid】のバランスがより一層崩れてしまう、ということです。その先に待っているのは、、、想像がつきますよね?

当たり前に思われてしまうような事を書いてきましたが、実際は見逃されがちで、とっても大事なことだと思います。

 

Yasu


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