FCユトレヒトアカデミーの育成ビジョン

2013-10-08 18.39.37

今回は私が研修しているFCユトレヒトのアカデミーについてご紹介します。

【FCユトレヒトというクラブ】

FCユトレヒトはオランダ1部リーグ、エールディビジに所属する、ユトレヒトを本拠地としたプロサッカーチームです。私はそのアカデミー、すなわちユースカテゴリのメディカルスタッフとして研修しています。

現監督はオランダが88年のユーロで優勝した時の中心メンバー、ヤン・ヴァウタース。本人も1980-1986年までFCユトレヒトのトップチームでプレーしていました。ユースカテゴリのスタッフの多くも、過去にクラブに在籍していた選手が務めています。

過去には藤田俊哉元選手、最近までは高木善朗選手がトップチームに在籍していました。他にも過去在籍していた代表クラスの選手と言えば、オランダではデリク・カイト、ミシェル・フォルム、ケビン・ストロートマン、リッキー・ファン・ヴォルフスウィンケル、現ベルギー代表ドリエス・メルテンスがいます。現在在籍している選手でいえば代表クラスは、オーストラリア代表トミー・オアル、ザンビア代表ジェイコブ・ムレンガがいます。

現在エールディビジでは9位につけており、浮上のタイミングを虎視眈々と狙っている状態です。

 

【アカデミーの構成とビジョン】

ユトレヒトのアカデミーはU19、U17、U16、U15、U14、U13、U12、U11、U10というように年代ごとに9つのカテゴリに細かく分かれています。そして各カテゴリには選手が16-18人、監督、アシスタントコーチ、メディカルスタッフ、マネージャー、ホペイロ兼ラインズマンがいます。全体としてはトップにはユース統括となる責任者の方、それ以外にGKコーチ、フィジカルコーチ、テクニックコーチ、スカウト、ビデオ撮影、送迎バス、栄養サポートなど様々です。学校の勉強を補助する役職の方もいます。(厳密にはU19の上のJong FC ユトレヒトというサテライトチームも育成カテゴリに分類されるのですが、実際はどちらかというとトップチームに近い扱いとなっています。)

ユトレヒトアカデミーの目的は、できるだけ多くのトップタレントを育成し、プロ選手へと成長させることです。願わくばその選手たちのできるだけ多くにFCユトレヒトのトップチームでプレーして欲しいと願っています。そのために育成を構成する要素として、「楽しさ」「個性」「専門的な教育」を重視しており、そのためのコーチングスタッフによって考えられた様々なトレーニングがあります。さらに学校教育と両立することにも重きを置ています。その理由は、すべての選手がトップチームに上がれるわけではなく、そうなった時に社会生活に適応できるように、という考えがあります。

私の所属するカテゴリはU12ですが、その子たちはユトレヒトの近隣地域のアマチュアチームからのセレクションによって選ばれたエリート達です。エリートと言えば聞こえはいいですが、シーズン当初は子ども達本人にはまだまだその自覚はなく、全ての子ども達がプロチームの育成選手としての振る舞いを備えているわけではありませんでした。それでも多くのプロチームやアマチュアチームと試合をしていく中で、特にアマチュアチームと試合をする時には、「君達はプロチームの育成カテゴリにいるんだ」と、監督は時に厳しい言葉でその立場への自覚を持たせています。別にガチガチにスパルタな指導をやっているわけではありません。ただ、これはユトレヒトに限らず、オランダの子ども達の育て方に影響しているのだと思います。

どういうことかと言いますと、「オランダの子ども達の幸福感は世界一」というランキング結果や、普段の親が彼らに接する様子からも察することができるのですが、オランダの子ども達は非常にストレスの少ない環境で生活しています。言葉を選ばなければ、日本人の教育と比べて甘やかされている場面が多いと感じます。ですので彼らの行動は同年代の日本人の子ども達と比べても非常に協調性が欠けており、集団行動はあまり得意な分野ではありません。決して意地悪な子や思いやりのない子で構成されているわけではありませんが、チームとして力を合わせる、周りと歩調を合わせるということが苦手です。

ですので、あえてプロチームにいるということを繰り返し、子ども達にプライドを持たせます。監督は何度も「君たちはアマチュアではない」「チームとして行動し、チームとして勝つんだ」ということを伝えて、自分達の振る舞いを律することができるように教育していきます。

この教育方針は大したもので、時々U14やU16のカテゴリに帯同すると、彼らはきちんと集団行動ができるようになっており、大人の風格さえ漂わせています。話をすればまだまだ子供っぽさも見られますが、試合前の準備や自身の身体のケアへの関心も充実しており、しっかりとプロ選手へと向けて成長していると感じました。

 

【このクラブで、私にできることは・・・】

私の役職はU12の試合に帯同するメディカルスタッフです。この活動をしていて彼らの成長を間近感じた時や、チームの勝利に貢献できた時はもちろん嬉しく、監督や選手からも信頼されていると実感できた時というのは、何者にも代えがたい瞬間です。きっとトレーナー関係で活動している方は、同じような経験があり、それがモチベーションになっているのではないでしょうか。

私が初めてクラブで研修をスタートさせた時も、監督をはじめ周りのスタッフ、選手は非常に暖かく迎え入れてくれました。

今の私はまだまだ修行中の身ですが、まずは自分にできることを精一杯やってチームに貢献することで、このクラブに恩返しをしていきたいと思っています。

 

 

Yasu


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