痛みについてまずは知り、付き合い方を考える

転倒

痛みっていうのは嫌なものですよね。サッカーではもちろん、日常生活でも簡単に起こります。なるべく出会いたくないこの痛みってヤツですが、それは身体の異常を教えてくれる重要なサインだったりもしますから、大事なのはきちんとそれと向き合っていくことです。

でもまずは、それがいったい何なのかを知らなければ、その恐怖は増すばかりですよね。今回はそんな痛みについて、少しでもわかりやすくなればと思い、書いていきます。

 

【そもそもなぜ痛みが起こるのか?】

痛みは身体からのサインだと言いましたが、何のためのサインなのでしょう?まずはその存在意義について理解することにしましょう。

痛みとは目に見えないものであるため、その実態を正確につかむことはなかなか難しいところなのですが、こう捉えられています。

「痛みとは、実質的な組織の損傷、もしくは組織の損傷の危険性によってもたらされる、不快な感覚的、または情動的な体験である」

健康な組織が実際に傷つけられる、もしくは組織が傷つけられ得る危険性をもった刺激が与えられたときに、身体の反応として起こるものが【痛み】です。それは私たちにとって心地よいものでない場合が多く、先ほども述べたように、それは身体からの警告としての役割があります。

このような組織が傷つけられる、もしくは傷つけられる危険性のある刺激を「侵害刺激」と呼び、体内の至る所にあるこの刺激をキャッチするための「侵害受容器」によって、刺激として捉えられています。

つまり痛みとは、身体の組織が損傷している、これから損傷しそうだということを教えてくれるサインだということです。それがわかれば回避行動もとれますね。熱いものに触って思わず手を引っ込めるのは、それ以上身体が傷つかないために起こることですよね。

 

【急性の痛みと慢性の痛み】

痛みには急性のものと慢性のものがあります。急性の痛みは前述したように、体内からの警告系の信号です。以前、このブログでもご紹介したように、怪我をした直後の急性期に起こる炎症反応によって、引き起こされる痛みがそうです。

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ですが慢性の痛みの場合は必ずしも身体からの警告というわけではではありません。ここでは生理学的に組織の治癒にかかる妥当な期間が過ぎても持続している痛みのことを意味し、そこには様々な患者さんの心理的、社会的な問題が潜んでいることが多いです。

最近の理論では慢性痛の原因として、①大脳辺縁系の変化②中枢・末梢神経の過敏な反応③鬱や病気に対する偏った考えなど精神的な面、などが上げられています。

 

【痛みへの反応・コーピングスタイルを見極める】

さて、このような痛みに対して、患者さんや選手は様々な反応を取ります。どのようにその痛みと向き合うか、と言い換えてもいいのですが、その対応を「コーピングスタイル」と呼びます。もともとストレスに対してどのように対処するかをタイプ別に分けたものなのですが、その4つとは、

  1. 積極行動型:ストレスに対して積極的に向き合って解決策を探す
  2. 気晴らし型:ストレスがあるとそれをごまかすための行動に移る
  3. あきらめ型:ストレスについて、逃れられないとネガティブな感情にとらわれている
  4. 否認・回避型:ストレスについて考えることを放棄している

です。

痛みもストレスの一種ですから、誰しもが無意識にですが何らかのコーピングスタイルによって対処することを選択すると思います。このうち、自力で解決できる可能性があるのは1の積極行動型だけとされており、その他のパターンでは何らかの専門家の介入が必要となります。もちろん、専門知識や痛みを取り除く方法については誰しもが専門家から得なければならない情報ですが、それ以外の部分で、私たちのような専門家はパターンを見極めて対応しなければならないということですね。

もちろん専門家ではない皆さんも、自身がストレスに対してどのように行動しているかを一度振り返ってみてはいかがでしょう。自分を知るということは大事なことです。今回のような痛みにおいては、急性痛ではもちろん、痛みを取り除くことに積極的に行動する人が多いと思います。ですが慢性的になった時(例えば肩こり!)に、案外仕方がないものとして日々痛みと共に過ごしている方もいらっしゃるのではないでしょうか?バリバリに積極的に行動する必要はありません。それはそれで疲れてしまいます。ほどほどに、専門家を頼ってみてはいかがでしょうか?

 

【サッカーと痛み】

さて、私はサッカーチームにおけるメディカルスタッフですから、サッカーの現場での痛みに遭遇することが多いです。明らかに外傷で痛みの原因がハッキリしているものは割と対処がしやすいですが、問題なのは選手本人にも身に覚えのない痛みです。そういう場合は往々にして疲労が蓄積していたり、ウォーミングアップ不足だったり、既往によって身体の筋力だったり関節の可動域のバランスが崩れていたり、様々な原因が考えられます。そして厄介なのは、身体のバランスが崩れていたりした場合です。このような障害のパターンは、長い時間をかけて蓄積されたものであるため、ある程度そのアンバランスさが身体に染み付いてしまっていて取り除く・解決するにも時間がかかります。筋力のアンバランスやコーディネーション不良だったりすると、正しいものを身につけさせなければ、例えば極端な話、痛み止めの注射などで痛みは取れてプレーは可能になったとしても、根本の解決にはなりません。結局繰り返すことになります。代表的な例が腰痛やグロインペインでしょう。体幹の筋力や下肢の筋力、可動域などが原因としてあげられることが多いですが、痛みが取れたりまた痛みが出たりを繰り返している選手は多いのではと思います。

大事なのは、メディカルスタッフの所でしっかりと選手の痛みの原因を理解してそれを取り除き、痛みの再発を防ぐことです。ともすれば痛みというのは、それが無ければ万事OKだと捉えられがちです。もちろん痛みがないことを一つのプレー可の基準に置くことは多いと思います。私の研修先でもそうです。ですがその痛みがもとは外傷から来るものだったのか、障害から来るものだったのかで、対応は変わってきます。後者であればより注意が必要なのは、メディカルの人間であれば常識ですよね。私たちメディカルスタッフはその専門性を持って、痛みの種類をきちんと捉えて、私たちに任せられた部分できちんと対応して選手をピッチに送り出さなければいけないですね。

もちろん、チーム事情を理解して上手く調整することも必要だとは思います。痛みが取れたあと、原因を完璧につぶすためにじっくり時間を掛けることが難しい場合もあるでしょう。それはそれとして割り切って、その中でベストを尽くすことを考える柔軟さもメディカルスタッフには必要です。リハビリで選手を治す能力と同じくらい、大事だと思います。

 

Yasu


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