【オーバートレーニング症候群】について知っておきたいこと

photo credit: Cos’è la sindrome da overtraining via photopin (license)

 

さて今回は【オーバートレーニング症候群】についてです。

文献をご紹介しながら、最後に雑感(と言いつつ一番言いたいことかも)を書いています。

オーバートレーニング症候群。

最近ではSVホルンの権田修一選手、元ヤングなでしこ主将の藤田のぞみ選手、過去には川崎フロンターレの大久保選手が南アフリカW杯直後に発症しています。

他にも、内田篤人選手(シャルケ)や森崎和幸選手(広島)もオーバートレーニング症候群が疑われたそうです。

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名前くらいは聞いたことがあるという方も、結構いるのではと思います。

しかし、その病気そのものはどういったもので、どのようにすれば防いだり、治療できるのか、は広く知られているわけではありません。

今回はその謎に包まれた【オーバートレーニング症候群】について、迫ってみたいと思います。

参考にさせていただいたのは以下の文献です。

Overtraining syndrome in the athlete: current clinical practice. – PubMed – NCBI

 

≪オーバートレーニング症候群とは何ぞや?≫

まず、【オーバートレーニング症候群】の定義について見てみましょう。

OTS(Over Training Syndrome)はトレーニングに起因する、もしくはさらなる日常生活のストレス因子に起因するストレスの蓄積が結果として長期のパフォーマンスの低下を引き起こすものである。パフォーマンスの低下には、心理的・身体的兆候や症状が同時に現れることもある。

また一方で、

この定義は非常にあいまいであり、それがオーバートレーニング症候群の診断を難しくしている理由の一つでもある

との記述もあり、非常に難しい疾患だということがわかります。

 

≪どのように診断するのか?≫

オーバートレーニング症候群かどうかを見分けるのにまず用いられるのが、パフォーマンスの回復の有無、です。

長期休暇後(約2週間以上)にもかかわらずパフォーマンスの低下がみられたり、疲労の回復がなされていないと、オーバートレーニング症候群ではないか、と疑われます。

疲労回復の判断に有用な指標とされているのが心拍数と血中乳酸値です。

特に心拍数は、疲労が蓄積してくると起床時といった安静時心拍が上昇する傾向にあります。

また、心理面についてはRecovery-Stress-QuestionnaireやPOMS(Profile of Mood  States)という質問紙検査によって、情緒の変化を数値化することもでき、メンタル面を評価するのも有効だとされています。

基本的にはパフォーマンス低下が一番最初に注目され、そのパフォーマンス低下の考えられる原因を一つずつ除外していった結果、明確な原因が残らなかったときに、これらの項目を考慮してオーバートレーニング症候群の可能性が疑われます。

 

≪予防・治療はどうすればいいのか?≫

次に、どうやってオーバートレーニング症候群を予防・治療していけばいいのか、という点をご紹介します。

何よりも大事なのは早期発見です。

選手がオーバートレーニング症候群に陥った時にいかに早く気づくことができるか、という点において効果的だとされているのが、心拍、血中乳酸濃度、情緒の変化を定期的に記録していることです。

診断の項目とも重複しますが、特に心拍数の計測は簡便であり、予防の観点からも有用であるといえます。

心拍数はトレーニング前後にも組み込みやすいですし、何よりオーバートレーニング症候群だけでなくコンディション評価にも使えるため、測っておいて損はありませんね。

主な治療法はとにかく【休む】という事です。

中程度の症状であれば数週間の休息やトレーニング負荷の軽減で、回復するとされています。

また、ハイレベルの選手に対しては、強制的な完全休養が逆にストレスになる可能性もあるとして、相対的に休息の割合を増やしていく方法がすすめられています。

また質問紙検査をもとに心理面からの専門家のアプローチも効果的です。

ただ先述のように症状は選手の数だけあるといってもいいので、個々に応じたマネージメントが必要です。

あと文献内の気になる記述として、高炭水化物の食事がオーバートレーニング症候群の予防と、発症してからのリカバリースピードに好影響を及ぼすとされています。

ちょっと気になりますね。

別の機会にこちらも調べてみましょう。

 

≪文献のまとめ≫

ということでまとめです。

結局現場レベルで知っておくべきことをまとめると、特に大事なことは以下の3つです。

  1. 日常的に心拍を計測する(安静時に普段より高かったら要注意)
  2. 2週間以上の長期休暇後の選手のコンディションに注意(パフォーマンスと心拍数を元に評価)
  3. 現状、発症したら休息が最善策

が早期発見にむけてこれから今すぐにでも取り組めそうな項目であるといえます。

それにプラスアルファで【バランス良い食生活(予防・治療目的に有効かも)】にも取り組めるといいですね。

 

特別なコストもかかりませんし、取り入れる価値はあるかと思います。

さらに可能であれば、専門家のもとで【心理面に関する質問紙検査】というのができればいいかと思います。

 

≪現場でできること≫

ここからは、文献を読んだうえでの私の考えです。

正直言って、選手の数だけ病状にもパターンがあるのがオーバートレーニング症候群の厄介なところだと思います。

そして現場での初期対応が一番重要だとも思います。

そもそもの兆候である【パフォーマンスの低下】を気付きやすい立場にいるのは指導者・保護者の方々です。

ちょっとしたパフォーマンスの異常を「ん?なんかおかしいな?」とするのか「休み中だらけとったな!たるんどる!」とするのか、対応で結果に差が出るのは明白です。

割とあいまいな感覚でもリスクマネージメントを第一に対応できる現場の柔軟性が問われているといっても過言ではありません。

とくに日本ではまだ、ただ量をこなして頑張ることが良しとされており、【休息】という考えがそれに追いついてきていないことが多いです。

まじめで頑張り屋な、ストイックな選手ほどオーバートレーニング症候群にはなりやすい、というのは想像に難くないことですが、日本にはカテゴリに関係なくそのような選手が多いと感じます。

そこに拍車をかけるように量を要求する指導・環境があるとすると、まだまだ顕在化していないオーバートレーニング症候群の例はたくさんありそうです。

私の本職はメディカルスタッフですので、その立場から言うと、やっぱりできるだけ軽度のうちに発見したい、というのが本音です。

特にオーバートレーニング症候群の場合は目に見えて評価できる要素がそう多くなく、治療法についてグレーな部分が多いため、ある程度手探りで対応しなければいけない状況になることが予想されます。

要は「治療法が休む以外ハッキリしてないから、あれこれやったにもかかわらず、結果がついてこないことも十分有り得る」という事です。

ということで、ちょっとでも「おや?」っと気付けるケースを増やすこと、気付いたらすぐに治療に回せる環境を整備しておくことが最も重要だと思います。

まだこのケースの選手には出会ったことはありませんが、必要な時に必要な処置ができるよう、日頃から知識のアップデートは続けていきたいと思います。

 

Yasu

PHYSIO, 怪我

Posted by Yasu


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